MESSAGE


ラグビーでキックしたボールの飛翔のシミュレーションを行います。過去に行われたラグビーボールの空力特性に関する実験データを基にして、任意の位置から任意に設定した方向、蹴り上げる角度、またボールの回転数などによるボールの飛翔軌跡を計算し、3D CADで見ることができます。

THEORY

***** ラグビーボールの空力特性 *****
ラグビーボールの空力特性に関しては以下の文献を参考にしました。
非定常流体力の積極利用に関するスポーツ流体工学的研究,瀬尾和哉,デサントスポーツ科学28巻(2007年 6月 13日),pp.23-32 以下のURLからダウンロードできます。
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/db/seeds/descente28_03_seo.pdf
です。
上記の研究論文では、ラグビーボールの回転に関して、長軸周りの回転の場合と短軸周りの回転の場合に分けて解析しています。以下に上記研究論文より引用した空力特性とNLABO.BIZで開発した飛翔シミュレーションについて概説します。


//長軸周りの回転//
ω (グラフではSp)回転速度(r./s)
Lift 揚力
Drag 抗力
Y force 横力。
α 迎え角(deg)
としたときの揚力係数CL,抗力係数CD、横力係数CYは下図のようになります。



ただし、シミュレーションでは、αは、蹴りだし時の初期値は設定しますが、ボールの回転に伴うジャイロ効果に基づいて回転軸の傾きは一定と仮定しますのでボールの飛翔に伴って変化することになります。(下図)(ボールが水平方向に曲がっていく場合はその分もαの補正を行うべきことが想定されますが、そもそも、水平面内において、回転軸の方向がボールの進行方向とずれる場合の空力特性は明らかになっていませんので、補正はしていません。あるいは、水平面内において、回転軸の方向がボールの進行方向に一致するという条件でシミュレーションを行っていることになります。)



そのために、長軸周りに回転する場合の飛翔軌跡は落下時にはαが大きくなり、抗力も大きくなることから比較的急激に落下するようです。一方、上記実験では、横力は4種類のα値の場合のみ、回転数に対する変化が求められています。したがって、任意のαに対する横力の算出には、実験で明らかにされているαの条件に置ける値から線形補間で求めました。ちなみに、横力に関してはα=0°の場合は零ですが、やはり、落下時はαが大きくなることから横力も大きくなり、飛翔軌跡は水平方向に曲がっています。



次の2つの図はαの初期値を0°、蹴り上げ角度を20°,30°,40°にしたものです。蹴り上げ角度が大きいほど、落下時のαがおおきくなり、飛跡は水平方向に逸れていきます。この結果では蹴り上げ角度が30°が比較的曲がらず、飛距離も出ています。実際のゲームでは参考になるかと思います。





なお、定義に従って回転方向が正の場合はボールは左方向に曲がることになり、負の場合は右方向に曲がることになります。







//短軸周りの回転//
ω (グラフではSp)回転速度(r./s)
Lift 揚力
Drag 抗力
Y force 横力。
としたときの揚力係数CL,抗力係数CD、横力係数CYは下図のようになります。
(CDなどの下付添え字がβの値です。)


短軸周りに回転する場合は2種類のβの条件でのみ空力特性が明らかにされていることから、βに関しては2種類の内から選択することにしました。また、横力により横方向に逸れていく場合はβが変化する可能性がありますが、シミュレーションでは固定しました。 βが正の場合はボールは左方向に曲がることになり、負の場合は右方向に曲がることになります。また、βが90°の場合は水平方向には曲がりません。



ちなみに、長軸周りの回転の場合は、回転方向の正負によってボールの水平方向の曲がりの向きが違っていました。短軸周りの回転の場合はβの正負に関わらず、回転方向はボールの進行方向に下から上に回転する場合のみが想定されて、正の値となります。逆回転の場合は、揚力が負になることから、ボールはすぐに落下します。現実においても、ボールの下部をキックするのであって、回転方向はボールの進行方向に下から上に回転することになります。


//長軸周りの回転と短軸周りの回転の飛距離の違い//
同じ初速度および蹴り上げ角度の条件で長軸周りの回転と短軸周りの回転の飛距離の違いについて考察してみます。

短軸周りの回転


長軸周りの回転


いずれも初速度は26(m/s)で、蹴り上げ角度を20°、30°、40°としました。
短軸周りの回転の飛距離が40(m)低度であるのに対して長軸周りの回転では70(m)にも達することがわかります。長軸周りの回転はいわゆるスクリューキックと呼ばれるものと把握していますが、どうしても水平方向に逸れていく性質があります。したがって、上記論文にある通り、タッチキックに相応しいキックであると考えられます。

YouTubeより
プロの本気のスクリューキック

(重要)
本飛球シミュレーターは、上記の論文で明らかにされた空力特性の実験結果によるものです。

実験では、ボールを長軸あるいは短軸周りに回転させたときの空力特性を求めたもので、回転軸の傾きに関わる角度であるαやβを固定してあります。実験結果からはピッチングモーメントやヨーイングモーメントも作用することが明らかにされていますが、本シミュレーションでは基本的にジャイロ効果に基づいて回転軸の傾きは一定にしてあります。

このように、シミュレーションは、あくまでも、こうした一部の条件設定の範囲でのみなされたものであることを十分に理解してください。末尾になりましたが、上記論文の著者に特別の感謝をいたします。ラグビーボールの複雑な空力特性に関して、極めて重要な知見を与えているからです。

SAMPLE

// ゴールキック //

短軸周りの回転のキックでゴールキックをしたものです。ゴールラインから40m手前からのキックでは、比較的強いキックでようやくゴールになりました。β=90°の条件の方が距離も出やすく、真っすぐに飛ぶのでコントロールしやすいことがわかります。




// タッチキック //

長軸周りの回転のキックでタッチキックをしたものです。自陣のゴールラインから5mしか離れていない位置からですから、距離が出ることが求められます。長軸周りの回転のキックは、難しいとのことですが、距離はでます。ただ、ボールの回転により、横方向にかなり逸れていきますので、ゴールキックのようにターゲット位置が狭い場合はコントロールが難しくなります。蹴り方で横方向にかなりばらつきますが、飛距離は出やすいことから長軸周りの回転のキックは有効なキックであると考えられます。




// 秩父宮ラグビー場 //

実際のラグビー場の観客席を表現できますので、観客性に飛び込むボールの検討を行うことができます。
以下は秩父宮ラグビー場でのタッチキックです。
Sample DXF Download右クリックでプルダウンメニューからダウンロードしてください



ラグビー場に高さ15mの防球ネットを設置してみました。防球がなされています、



APLICATION

ラグビーの飛翔解析を行うためにNLABO.BIZではWeb Aplicationを開発しました。
長軸周りに回転する場合のアプリケーション


および、短軸周りに回転うる場合のアプリケーション
があります。
いずれも、各種パラメータを設定して実行(キック)し、3D CADのファイル形式であるDXFを出力することができます。
DXF FILE
3D CAD READER(Autodesk DWG TrueView など)


飛跡には番号が尽きます。(下図)
番号毎のキック条件詳細が画面下に表記されます。
Webアプリケーションで、防球ネットを設定することができます。
データはポールの(X,Y,H)です。


現在、Webアプリケーションは公開していません。ご了承ください。

NLABO.BIZ

    NLABO.BIZ は東北学院大学工学部機械知能工学科(旧)長島研究室で開発されたWebアプリケーションを紹介し、実際の応用に関して一般社会に還元します。
    ご相談は、以下までお願いします。
    NLABO.BIZ代表 長島慎二*
     * 東北大学工学部卒・(前)東北学院大学工学部准教授・(現)長谷川体育施設(株)技術顧問・日本機械学会永年会員
     ***** 論文 ****
     乱流渦モデルを用いた渦法に関する研究,長島慎二, 井小萩利明, 機論B, 62-597, (1996), pp.63-68
     野球場における防球ネット高さの解析,長島,慎二,清原,光希,高橋,玄,東北学院大学工学部研究報告,54-1,(2020),pp.1-11
     乱流渦モデルにおけるレイノルズ応力,長島,慎二,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.1-6
     地面近傍の航空機随伴渦の挙動に関する解析,長島,慎二,佐々木,信吾,高橋,悟,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.11-15
     乱流渦モデルを用いた航空機随伴渦の減衰特性の解体,長島,慎二,大倉,亮,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.7-10
     地面近傍の航空機随伴渦の挙動に関する解析,長島,慎二,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.11-158
     乱流渦モデルを用いた航空機随伴渦の減衰特性の解析,長島,慎二,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.7-10
     乱流渦モデルにおけるレイノルズ応力,長島,慎二,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.1-6
     SVGを用いた地震データ3D表示webアプリケーション,長島,慎二,野村,剛生,東北学院大学工学部研究報告,44,(2010),pp.1-5
     他 多数


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