MESSAGE


東北学院大学工学部機械知能工学科(旧)長島研究室では、アーチェリーの矢の飛翔を3次元解析してきました。地面高さ補正(m)、エイムオフ(deg)、発射角度(deg)、発射初速度(km/h)、身長(m)、風速(m/s)、風向(deg)を設定可能で、高さや位置などを任意に設定した防矢ネットや垂れネットによる防矢の検討を行なうことができます。競技場の設計や改修の検討を行なうに際してご相談ください。

THEORY

***** アーチェリーの矢の空力特性 *****
アーチェリーの矢の飛翔に関する空力特性に関しては以下の文献を参考にしました。
「矢の空力特性に対する細長比の影響」大川, 田口, 宮嵜, 杉浦, ながれ32(2013) 449-456
https://www.nagare.or.jp/download/noauth.html?d=32-6tokushu8.pdf&dir=155


レイノルズ数R_eと抗力係数C_Dの関係

参考文献ではガスを使って矢を実際に発射させる飛翔実験(Fight)と、MSBS風洞実験(MSBS)の二種類の実験が行われています。本解析ではMSBS風洞を用いた実験のデータを使用しました。参考文献MSBS風洞を用いた2012年に行われた実験のデータも合わせて記載されていたため、二つのデータを参照ました。グラフを見るとレイノルズ数10000から12000前後の範囲で抗力係数が二極化していることが分かります。

***** 角度と抗力係数 *****
抗力係数は「矢の空力特性に対する細長比の影響」の論文に記載されている、矢と風との成す角度θと抗力係数の関係を示した実験データを参照し、そこから抗力係数を関数化しました。参照した実験データと関数のグラフは以下です

レイノルズ数R_eと抗力係数C_Dの関係


抗力係数の関数

***** Movie *****

Movie(研究室の学生が作ったムービーです)

SAMPLE

***** サンプル計算について *****
公益財団法人全日本アーチェリー連盟のWebサイト
https://www.archery.or.jp/ によれは、アウトドアアーチェリーにおいて、オリンピックや国体ではリカーブボウが使用され、射手から的までの距離が70mの競技が行われます。
一方。日本各地のアーチェリー場では射手から的までの距離が90mや50mがあるようです。以下では、3種類の距離のサンプル計算をしました。

***** 計算に用いたアーチェリー場 *****
70mアーチェリー場


90mアーチェリー場


50mアーチェリー場


垂れネット位置(垂れネットの位置と高さはいずれのアーチェリー場も同じにしてあります)


垂れネット高さ


防矢ネット高さ


***** 計算条件 *****
70m
エイムオフ(deg) 0°
発射角度(deg) 7°~17°および22°,23°,34°,36°
発射初速度(km/h) 180km/h
身長(m) 1.75m

90m
エイムオフ(deg) 0°
発射角度(deg) 4°~11°および14°,16°,21°,23°
発射初速度(km/h) 220km/h
身長(m) 1.75m

50m
エイムオフ(deg) 0°
発射角度(deg) 12°~18°
発射初速度(km/h) 120km/h
身長(m) 1.75m

***** 計算結果70m *****




的に当たる発射角度は8°であり、それぞれの垂れネットの下部を通り抜ける飛跡は、次の垂れネット、あるいは防矢ネットで止められます。

***** 計算結果90m *****




的に当たる発射角度は5°であり、それぞれの垂れネットの下部を通り抜ける飛跡は、次の垂れネット、あるいは防矢ネットで止められます。

***** 計算結果50m *****


的に当たる発射角度は13°であり、16°でも垂れネットを通過することから、垂れネットの下限高さは十分であることがわかります。

***** その他 *****
50mの場合に計算した条件である発射速度120km/hでは、垂れネットを通過する最大の発射角度においても70mの的には届きません(下図)。


そこで的から近い順に2つの垂れネットを取り去りました(下図)。発射角度を大きくすることで的には届くようになります。


ところが、垂れネットを2つ取り去った場合に、的までの距離が70mの場合に計算した条件である発射速度180km/hでは(下図)、うっかり発射角度を大きくして矢を射るとアーチェリー場を遥かに超えてしまいます。実際には、70mや90mのアーチェリー場で射速度120km/hは現実的ではありません。


逆に、90mの場合に計算した条件である発射速度220km/hで、50mのアーチェリー場における計算をした場合(下図)においても、垂れネットをぎりぎり通過した矢も、50mの位置の防矢ネットを超えることはありません。


こららの結果より、サンプル計算の垂れネット設定条件は、50m、70m、90mのいずれのアーチェリー場においても有効であると考えられます。

特殊な場合として、発射速度が300km/hにも達するコンパウンドボウにおける計算では、下図のように、発射角度が15°では3番目の垂れネットの下限を通過して4番目の垂れネットの上限付近で防矢がなされていますが、発射角度が9°では4番目の下部を通過した矢が70m位置の防矢ネットを超えています。


コンパウンドボウは、オリンピックや国体では使用されませんが、車椅子上の射手が用いることもあります。本報告の計算例では射手の身長が1.75mとしていますから、車椅子の射手の場合のように、より低位置からは垂れネットを容易に超える可能性もあります。常識的には、このような大きな発射角度は考えられませんが、4番目の垂れネットの上限や防矢ネットの高さをもう少し高くしておいてもいいかと考えられます。

NLABO.BIZ

    NLABO.BIZ は東北学院大学工学部機械知能工学科(旧)長島研究室で開発されたWebアプリケーションを紹介し、実際の応用に関して一般社会に還元します。
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    NLABO.BIZ代表 長島慎二*
     * 東北大学工学部卒・(前)東北学院大学工学部准教授・(現)長谷川体育施設(株)技術顧問・日本機械学会永年会員
     ***** 論文 ****
     乱流渦モデルを用いた渦法に関する研究,長島慎二, 井小萩利明, 機論B, 62-597, (1996), pp.63-68
     野球場における防球ネット高さの解析,長島,慎二,清原,光希,高橋,玄,東北学院大学工学部研究報告,54-1,(2020),pp.1-11
     乱流渦モデルにおけるレイノルズ応力,長島,慎二,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.1-6
     地面近傍の航空機随伴渦の挙動に関する解析,長島,慎二,佐々木,信吾,高橋,悟,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.11-15
     乱流渦モデルを用いた航空機随伴渦の減衰特性の解体,長島,慎二,大倉,亮,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.7-10
     地面近傍の航空機随伴渦の挙動に関する解析,長島,慎二,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.11-158
     乱流渦モデルを用いた航空機随伴渦の減衰特性の解析,長島,慎二,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.7-10
     乱流渦モデルにおけるレイノルズ応力,長島,慎二,東北学院大学工学部研究報告,45,(2011),pp.1-6
     SVGを用いた地震データ3D表示webアプリケーション,長島,慎二,野村,剛生,東北学院大学工学部研究報告,44,(2010),pp.1-5
     他 多数


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